量子力学と情報空間から読む「タフティ」――バリアント空間は本当に存在するのか

「タフティ」や『リアリティ・トランサーフィン』では、

未来はすでに無数の“フィルム”として存在していて、
その中からどれを再生するかを“意識”が選んでいる

という世界観が語られます。

一方、現実の量子力学でも「観測が結果を決める」という、直感に反する話が出てきます。二重スリット実験では、観測の有無によって電子のふるまい(波か粒か)が変わることが知られていますが、ここでは「意識そのもの」が直接関わっているとは主流物理学は認めていません。

この記事では、タフティの概念(バリアント空間・振り子・過剰ポテンシャルなど)を、量子力学や情報空間の考え方と“ゆるく対応づけて”読むことを目的にします。
あくまで「公式な物理理論」と「スピリチュアルなメタファー」を混同せず、どこまでが科学の土台で、どこからが物語としての仮説なのかを意識しながら見ていきます。

タフティとリアリティ・トランサーフィンの世界観

ヴァジム・ゼランドは、ロシアの作家であり、『リアリティ・トランサーフィン』シリーズや『タフティ:映画の中を生きる巫女』などの著者として知られています。タフティ本は、既存のトランサーフィン理論に「映画のフィルムを編集する巫女」というイメージを追加した、上位版テクニックと紹介されることが多いです。

この世界観のキーワードは次のとおりです。

  • バリアント空間
    未来のあらゆる可能性が「フィルム」としてすでに存在している情報空間。
  • 振り子(ペンデュラム)
    多くの人の注意や感情を吸い取り、同じパターンを繰り返させる「エネルギー構造」。宗教・政治・SNS炎上・職場文化などが例として挙げられます。
  • 過剰ポテンシャル
    「絶対こうでなければダメだ」といった強い執着や欠乏感によって生じる不自然なエネルギーのゆがみ。

タフティは、こうした概念をまとめて

「望むフィルムを選び直し、“自分の映画”を撮り直す方法」

として提示します。ここに量子力学や情報科学の視点を重ねてみると、世界の見え方が少し変わります。

バリアント空間とホログラフィック宇宙という発想

ゼランドが語るバリアント空間は、「まだ再生されていない未来のフィルムが並んだ巨大アーカイブ」というイメージです。
現実として経験しているのは、そのフィルムのうち今、観測している一本だけ
だ、というわけですね。

現代物理では、これに直接対応する理論は存在しませんが、近い雰囲気をもつアイデアはいくつかあります。

2-1. ホログラフィック原理と情報空間

理論物理学には「ホログラフィック原理」と呼ばれる考え方があります。
これはざっくりいうと、

「ある空間の中身の情報は、その“外側の境界面”にすべて記録されている」

というアイデアです。反デ・ジッター空間と境界上の量子場理論が等価だとするAdS/CFT対応は、その代表例とされています。

難しい式は置いておくとして、直感的には

  • 3Dの宇宙の中身 ←→ 2Dスクリーン上の情報
  • 「中身」と「外側の情報」は数学的に同じ内容を持つ

という「宇宙ホログラム」の発想です。

この視点から見ると、バリアント空間=“外側の情報ライブラリ”
私たちが暮らす3次元の現実=**“今、再生されている一本の映像”**という比喩は、完全なファンタジーではなく、「情報=実在」という近年の物理のムードと、ある程度は共鳴していると言えます。

2-2. 観測と波動関数収縮

量子力学では、電子や光子は観測しないときは“波”として広がり、観測すると“粒”として結果が一つに決まるというふるまいを示します(二重スリット実験)。

  • 観測前:複数の可能性が重なっている状態(波動関数)
  • 観測後:そのうちの1つに結果が決まる(波動関数の収縮)

という描像は、

バリアント空間にある“複数フィルム” →
観測によって“1本が選ばれて再生される”

というタフティ的世界観と、たしかに似た構造を持っています。

ただし注意したいのは、主流の物理学は「人間の意識」が直接波動関数をつぶすとは考えていないという点です。
測定装置との相互作用だけで説明しようとする立場が一般的であり、ディーン・レイディンらによる「意識が干渉縞を変える」といった実験も、その後の追試で統計的な問題や偽陽性の可能性が指摘されています。

振り子(フリコ)と「欠乏プログラム」の正体

タフティ/トランサーフィンでは、**振り子(ペンデュラム)**という概念が頻繁に登場します。
これは

多数の人の注意・感情をエサにして、
同じ考え方や行動パターンを増幅させる“情報エネルギー体”

として説明されます。

  • 「世間体」「普通こうするもの」「みんなやってるから」
  • 常に不安をあおるニュース
  • 極端な推し文化や対立を煽るSNS炎上 など

を、ゼランドは“振り子”と呼びます。

3-1. 振り子=社会的・神経学的な「現状維持装置」

心理学・神経科学の言葉に置き換えると、振り子は

  • 集団規範(みんなと同じでいようとする圧力)
  • 報酬系(ドーパミン)と恐怖系のセット
    → 「いいねがほしい」「叩かれたくない」
  • コンフォートゾーンの維持(変化よりも安全を優先)

といった仕組みの総称に近いものとして理解できます。

脳の報酬系は、短期的な快楽(ドーパミンスパイク)とその反動としての不安・虚しさを行ったり来たりしながら、依存的な行動パターンを強化しがちです。
SNS・ジャンクフード・ギャンブルなどの「一瞬の快感 → その後の虚無」というループは、まさに振り子が揺れ続ける構図と重なります。

3-2. 欠乏に合わせた“宇宙側の設定”

動画の主張では、

「宇宙や高度文明が、“飽きないゲーム”として、
わざと欠乏や不完全さを感じるように私たちを設計した」

という仮説も語られています。これは完全にサイエンスの外側にある物語ですが、心理レベルの比喩として読むことはできます。

  • いつも「足りない」を前提に行動する
  • 幸せの条件を“未来のどこか”に置いてしまう

こうした思考パターンが「結望維持プログラム」(欠乏前提の現状維持ソフト)として自我にインストールされている、という見立てです。

ここから得られる実践的なポイントはシンプルで、

「欠乏しているから頑張る」のではなく、
「すでに十分だと感じながら、遊びとして望みを選ぶ」

という“中立〜充足ベースのスタンス”を身につけよう、という提案になります。

過剰ポテンシャルと“引き寄せ”を情報空間として見る

タフティ理論では、過剰ポテンシャルとは

「これが手に入らなければ生きていけない」
「あの人こそ運命の相手だ、絶対逃してはいけない」

といった、強すぎる執着が作るエネルギーのゆがみと説明されます。

4-1. エネルギー=傾斜という見方

物理では、エネルギーは基本的に**高低差(ポテンシャル)**として定義されます。
高い所から低い所に水が流れるように、差があるところに流れが生まれます。

このアイデアを情報空間に持ち込むと、

  • 思考・信念・感情 → 情報の“重さ”や“濃さ”
  • それらが集まったところに「傾斜」ができる
  • 傾斜の方向に、人・情報・出来事が“流れやすくなる”

という比喩が成立します。

4-2. 執着ベースの願いは「浅くて壊れやすい傾斜」

過剰ポテンシャルのポイントは、です。

  • 「欠けている自分」を前提にした願い
  • 他人への依存・支配欲・比較から生まれた願い

こうした願望は、表面上のエネルギーは強く見えても、情報空間的には浅くて壊れやすい傾斜しか作りません。
なぜなら、根っこが「怖れ」や「不足」に基づいているため、心のどこかでブレーキも同時に踏んでいるからです。

4-3. 中小度の高い意図=深く静かな“くぼみ”

対照的に、

「これが実現してもしなくても、私はもう十分幸せだけど、
それでもこうなったらすごくおもしろいよね」

という中立〜充足ベースの意図は、過剰ポテンシャルを生まず、情報空間に**深く静かな“くぼみ”**を作る、と説明されます。

心理学的に言えば、

  • 自己肯定感(今の自分を認める感覚)
  • 自己効力感(なんとかできるという感覚)

が高い人の願いは、行動も継続しやすく、周囲の協力も得られやすいため、「引き寄せっぽい現実」が起きやすい、ということです。

タフティ実践を“量子コーチング”として使う

タフティには、いくつか代表的なワークが登場します。ここでは、それを情報空間×脳科学の観点から“安全に”利用するための整理をしてみます。

5-1. 三編み:未来のフィルムを先に“観測する”

三編みの基本は、

  1. 望む未来のシーンを具体的に思い描く
  2. そのシーンの中での五感・感情を細かく味わう
  3. 「すでにそうなっている自分」として今を生きてみる

というプロセスです。
これは心理療法やコーチングで言うフューチャーペーシングに近く、脳内で「未来の成功体験のシミュレーション」を繰り返すことで、現実の行動パターンや選択が変わっていきます。

量子的な言葉を使うと、

「未来のフィルムを先に強く観測し、その情報を現在に“逆流”させる」

というイメージですが、実務的には

  • 自己イメージの更新
  • 目標に向かうときの恐怖・罪悪感の軽減

といった心理的効果が主役だと考えるのが安全です。

5-2. セルフナレーティングと「振りを滑る」

振り子から抜ける技法として紹介される**セルフナレーティング(実況中継)**は、

「今、私は不安になっているな」
「また“どうせうまくいかない”って思い始めたな」

と、自分の内面をスポーツ実況のように言葉で描写するやり方です。

これはマインドフルネス実践や認知行動療法でも使われるテクニックで、

  • 感情=自分
  • 思考=自分

という同一化状態をいったんほどき、
“観ている自分(観測者)”と“湧き上がる反応”を分ける効果があります。

この距離が取れると、振り子(古いパターン)の揺れに飲み込まれず、「あ、またあのパターンが出てきたな」と軽くスルーして、選び直す余白が生まれます。

5-3. 中小度の高いゴール設定と「遊び」の感覚

最後に、タフティ的な願望実現で一番大事なのは、

「これが叶わなきゃ終わり」ではなく
「叶っても叶わなくても人生は続く、でもやると面白いからやる」

という遊びの感覚を取り戻すことです。

タフティはしばしば、とんでもなく派手な物語とセットで語られますが、日常レベルに落とすと「中立でいながら、面白い選択をする練習」と言い換えることもできます。

タフティは“宇宙の取扱説明書”ではなく、現実の編集ツールとして

この記事で見てきたポイントを整理すると:

  • バリアント空間は、「未来の可能性が情報としてストックされた空間」というメタファーであり、ホログラフィック原理や情報としての宇宙観と雰囲気が重なる部分もあるが、物理学の正式な概念ではない。
  • 振り子は、社会的な常識・恐怖・報酬系のクセが作る「現状維持プログラム」の比喩として、心理学的に解釈すると実務で使いやすい。
  • 過剰ポテンシャルは、欠乏ベースの執着が生む自己破壊的な緊張を指しており、「すでに十分だ」という中立感覚から願うことで、結果的に行動・選択・人間関係が変わりやすくなる。
  • 三編みやセルフナレーティングは、未来の自己イメージを書き換え、古いパターンとの距離を取るための“量子コーチング的ツール”として応用できる。

私の感想としては、タフティやトランサーフィンを「宇宙の真実」として信じ込む必要はまったくなくて、

  • 何が科学的に確認されているか
  • どこから先は“使えるメタファー”として扱うか

を分けておくと、かえって安心して遊べるフレームになると思います。
「どうせ映画なら、どんなフィルムを選んで遊んでみる?」という問いとして軽く使うと、現実の選択も少し柔らかくなるはずです。

参考にした文献

  • Vadim Zeland “Reality Transurfing”/振り子(pendulum)を「集団の注意とエネルギーを吸い取る構造」と定義し、現実の“フィルム”を選び直す技法を提示。2025-11-27 確認。
  • 同 “Tafti. Priestess of It” 系列書籍紹介/トランサーフィン理論の上位版としてタフティのテクニックが説明されている。2025-11-27 確認。
  • Maldacena, J. 他/AdS/CFT対応とホログラフィック原理の総説。境界上の情報と内部の重力理論が等価になり得ることを示し、「宇宙ホログラム」的発想の理論的基盤となっている。2025-11-27 確認。
  • 解説記事「Does the observer or the camera collapse the wave function in the double-slit experiment?」ほか/二重スリット実験では意識そのものではなく、測定装置との相互作用が干渉縞の消失を説明するとする主流見解。2025-11-27 確認。
  • Radin, D. らの「Consciousness and the double-slit interference pattern」と、その批判的再分析(Walleczek & von Stillfried, 2019, Frontiers in Psychology)/意識が干渉縞に影響する可能性を検証する実験と、それに対する統計的・方法論的疑義。2025-11-27 確認。

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