最近、「政治や経済の話に混ざれない」「職場やSNSのノリがきつい」「言い返す気力がない」という感覚が増えている気がします。発信をやめる人も増えた。けれどそれは「言いたいことがない」からではなく、“その場の質”に耐えられなくなったというタイプの撤退が多い。
しかも、この沈黙は“弱さ”に見えるのに、本人の内側ではむしろ感覚が鋭くなっていることがある。雑音が多い場所に入ると、身体が先に拒否する。そんな状態です。
この記事では、この現象をスピリチュアルの言葉だけで終わらせず、脳の仕組み(恐怖・怒りと理性のバランス)と、ネット空間の設計(アルゴリズムと拡散)で説明し直します。最後に、「消える」ではなく「次の段階へ移る」ための具体的な関わり方まで落とし込みます。
「消えた」のではなく「距離を取った」 発信をやめるのは珍しくない
まず前提として、SNSで政治・社会の話を頻繁に投稿する人は、もともと少数派です。Pew Research Centerの調査でも、政治・社会問題について「よく投稿する」人は少なく、多くは「ほとんど投稿しない」と答えています。
さらに今は、「誤解される」「攻撃される」「炎上する」というリスクが体感として上がっています。オンラインの虐待・嫌がらせが、表現を萎縮させる(自己検閲を生む)という問題は、PEN Americaなども継続的に扱っています。 加えて、報道・言論の分野では、自己検閲の増加を指摘する国際機関のレポートも出ています。
ここで大事なのは、「静かになる=退化」ではないことです。むしろ、場の粗さに敏感な人ほど、撤退の判断が早くなる。これは“霊的”というより、“生体としての自然な反応”に近い。
脳の仕組みで起きていること 怒りと恐怖が強い場は、理性を摩耗させる

スピリチュアルでいう「波動が合わない」を、僕はまず“脳の使い方が合わない”と置き換えます。
人間の脳にはざっくり言うと、危険に反応して「戦う/逃げる」を起動しやすい回路(恐怖・怒り)と、状況を整理してブレーキを踏む回路(理性・抑制)があります。恐怖・怒り側の代表が扁桃体、ブレーキ側に関わるのが前頭前野(PFC)です。前頭前野は、脅威反応の調整や感情の制御に重要だ、とする整理がレビュー論文でも示されています。
SNSや職場の空気が「即レス・即断・断定・怒り」で回り始めると、扁桃体が反応しやすい人ほど“参加したくなる”。逆に、前提を確認して言葉を選ぶタイプの人ほど、あのテンポと攻撃性に疲れます。結果として、理性的な人ほど「沈黙が増える」ように見える。でも内側では、処理が止まったのではなく、処理が丁寧になっただけです。
僕はこれを、「静か=無力」ではなく、静か=高解像度と呼びたい。荒い情報を荒く処理して即反応するより、背景・影響・副作用まで見えるようになったぶん、言葉が遅くなる。
ネット空間の設計が「声の大きい世界」を作る 分断は“仕様”として増幅される
ここが核心です。現代の“表舞台”は、内容そのものより、反応(いいね・怒り・引用・拡散)で勝負が決まりやすい。
実際に、X(旧Twitter)のようなエンゲージメント最適化のランキングが、感情的で分断をあおる内容を相対的に増幅しやすい、という監査研究が出ています。 こうなると、静かで長い説明は不利になり、短く強い断定が有利になる。
さらに、誤情報の拡散は“速さ”で勝ちやすい。Twitter上の大量データを使った有名な研究では、虚偽のニュースは真実より速く・広く拡散しやすいことが示されています。
そして最後に、エコーチェンバー(似た意見の中で強化される現象)も絡みます。ただしここは単純ではなく、研究上も「どれくらい起きているか」「何が原因か」に議論がある分野です。だから僕は、“ある/ない”で決めつけず、仕組みとして起きやすい条件があるくらいに置きます。
この3つ(ランキング・誤情報の速度・エコーチェンバー)が重なると、表舞台はどうしても“騒がしい世界”になります。そこに合わない人が静かになるのは、むしろ自然です。
スピリチュアル用語を現代語に翻訳する 「レプ」「悪魔」は外にいるのではなく“構造”として働く

ここからは、僕なりの翻訳です。これは事実ではなく、理解のための比喩(たとえ話)です。
「風の時代」は、情報が軽くなり、拡散速度が限界を超えた時代の比喩として読めます。ひと昔前なら“地域の噂”で止まったものが、今は一瞬で世界に飛ぶ。その速さが、熟考より反射を勝たせる。
「レプティリアン」は、爬虫類人型の話として受け取るより、扁桃体優位(恐怖・怒り・支配)になった人間状態の擬人化として読むと、SNSの現象とつながります。怒りは強い燃料で、燃えると拡散しやすい。
「悪魔」も、超自然的存在というより、情動反応を引き出して自己増殖する“仕組み”のことだと思う。怒りや不安に反応するほど、その構造は強くなる。僕はここに、アルゴリズムと人間の脳の相互作用を見ています。
この視点に立つと、「目覚めた人ほど静かになる」のは、徳が高いからというより、構造に気づいてしまったからです。気づいたら、同じ土俵で殴り合えなくなる。
2026年の分岐としての実践 沈黙ではなく「整った言葉を整った場所へ」
ここからは、具体的な動き方です。僕は「全部やめる(引きこもる)」も、「全部戦う(燃え続ける)」も、どちらも危ないと思っています。大事なのは、切らない/飲まれないの中間です。
そのためのコツは、派手な発信ではなく、自分の反応を整えることから始まります。瞑想やマインドフルネスは、扁桃体まわりのストレス反応や、前頭前野とのつながり(感情調整)に関係する可能性が研究で示されています。
ジャーナリング(書く内観)も、効果は万能ではないにせよ、メタ分析で全体として小〜中程度の改善が報告されています。
僕がすすめたいステップは、難しいことではなく、次の3つです(ここだけ短く箇条書きにします)。
- 反応を減らす:ニュースやSNSは「見ない」ではなく「回数と時間を決める」
- 言葉を整える:言い返す前に、紙に1回書いてから出す(ジャーナル)
- 場所を選ぶ:拡散の広場ではなく、文脈が保たれる場所(小さなコミュニティ、記事、長文)に置く
2026年が「分岐」と言われるのは、外側の事件の予言というより、“情報空間との付き合い方”が固定化されやすい時期という意味で僕は受け取っています。AIは良くも悪くも増幅器です。だからこそ、こちらの「意識(=扱い方)」が追いつかないと、負の増幅が起きやすい。
まとめ
“目覚めた人ほど消える”のは、負けではなく、場の設計と脳の相性が合わなくなった結果だと僕は見ています。怒りが拡散されやすいランキング、誤情報が速く回る速度戦、似た意見で固まる空間。そこに、丁寧な言葉は置きにくい。
だから静けさは、衰えではなく、処理精度の上昇です。反応しなくなったのは、鈍くなったのではなく、ノイズの判別ができるようになったから。
そして次の一手は、「沈黙して消える」ではなく、整った言葉を、整った場所へ静かに置くこと。表舞台から消えたように見える人が、裏側で空間の質を変える。その動きこそが“分岐”の正体だと思います。
筆者の思うこと

僕自身、「言い返せなくなった時期」があります。昔なら反射で返していたのに、今は一瞬止まってしまう。最初は「弱くなったのかな」と思ったけど、よく見ると逆で、止まるのは“怖いから”じゃなくて、言葉の副作用が見えるからでした。
SNSの空気は、たしかに怒りのほうが速い。しかも、速いものが勝ちやすい設計がある。だから僕は、戦い方を変える必要があると思っています。声を張るのではなく、整える。勝つのではなく、質を上げる。
結局、表舞台から消える人が増えるほど、世界はさらに荒れやすくなる。だから「静けさ」と「沈黙」は分けたい。静けさは成熟だけど、沈黙し続けると、怒りだけが残る。僕は、静かにでも言葉を置き続ける側に立ちたいです。
参考にした文献
- PNAS Nexus(Milliら)Twitter/Xのランキング監査:エンゲージメント最適化が分断的・感情的投稿を増幅し得る根拠
- Science(Vosoughiら, 2018):虚偽情報が真実より速く広がりやすいという大規模分析の根拠
- Pew Research Center(2021):政治・社会問題を「ほとんど投稿しない」人が多数という状況の根拠
- PEN America(2025):オンライン虐待が自己検閲や萎縮につながる問題意識の根拠
- UNESCO(World Trends 2022–2025):自己検閲の増加など、表現環境の悪化に関する指摘
- Nature系レビュー(Kredlowら):前頭前野が脅威反応・感情調整に関与するという整理
- MBSR/瞑想研究レビュー(Kralら等):瞑想が扁桃体反応やPFC-扁桃体結合に関係し得る根拠
- 表現筆記(expressive writing)メタ分析レビュー:ジャーナリングが心身に小さな改善をもたらす可能性の根拠
- エコーチェンバー研究のシステマティックレビュー:エコーチェンバーは測り方で結論が割れ、単純化できないという根拠
