月の正体と東京タワーの暗号

2006年ごろ、須藤元気がテレビの場で「月は人工物かもしれない」「東京タワーは“生と死”を背負って立っている」――そんな話をした、と伝えられています。実際、当時の視聴メモとして残っているブログ記事には「月はゴルゴ13」などのフレーズが記録されています。

僕は都市伝説を、最初から“嘘”として片づけたくありません。なぜなら、都市伝説は「違和感の種」を拾うのがうまいからです。ただ、その種を育てるときに必要なのは、勢いより順番です。

そこで今回は、月の話は天文学と月探査の基本、東京タワーの話は歴史資料と構造の事実を当てながら、「どこまでが確認できる話で、どこからが解釈なのか」を、できるだけ平易にまとめ直します。

「月は裏側を見せない」問題 自然現象としての答えがまずある

有名な言い方で「月は裏側を見せない」というのがあります。これ、実は“宇宙人の都合”じゃなくて、教科書レベルの自然現象で説明できます。

月は、自分で回る速さ(自転)と、地球のまわりを回る速さ(公転)がほぼ同じになっています。この状態を、NASAは「潮汐ロック(synchronous rotation)」として説明しています。だから地球から見ると、ほぼ同じ面がこちらを向き続けます。

よく「裏側=暗黒面」と言われますが、裏側がずっと暗いわけでもありません。太陽の光は普通に当たります。見えないのは“暗いから”ではなく“向きの問題”です。

この時点で、「裏側を見せない=不自然=人工物」は成立しにくくなります。まず自然の仕組みが先にあるからです。

「月の周期=28日」「クレーターが消えない」

月の周期が「28日」だと言われることがあります。でも、月の周期には種類があって、ざっくり二つだけ押さえれば十分です。

星を基準にすると月は約27.3日で地球の周りを一周します。一方で、満ち欠け(新月→満月→新月)の周期は約29.5日です。NASAの解説でも、月の動きはこの感覚で整理されています。

だから「28日ピッタリで一致している」という言い方は、正確にはズレます。さらに、女性の月経周期も“必ず28日”ではありません。医療機関は一般に21〜35日くらいの幅があると説明しています。

一方で、月のクレーターが消えにくいのは本当です。これは陰謀じゃなく、月の環境がそうだからです。月には大気がほとんどなく、風や雨による侵食がほぼ起きません。NASAの教育サイトも「大気がないので侵食がほとんどない」と説明しています。

ここは、都市伝説が拾っている“違和感”が、ちゃんと科学の面白さにつながるポイントだと思います。月は「変な場所」ではなく、「地球とは条件が違いすぎる場所」なんです。

「月は空洞」「鉄板で覆われている」説

月が空洞だ、という話は昔からあります。ここは言葉の使い方で誤解が生まれます。

まず、月全体が巨大な空洞という意味では、主流の理解と合いません。月には核を含む内部構造がある、という研究が積み重なっています。

ただし「月の地下に空洞がある」なら、現実味が出ます。月には溶岩が流れた跡の“溶岩チューブ(地下トンネル)”があり得る、という話は科学の側でも扱われています。近年も、地下の空間の存在を示す研究が報じられています。

つまり、空洞という言葉は「月全体が空っぽ」という意味ではなく、「地下に洞窟状の空間があり得る」という意味なら成立する。ここを混ぜると、話が一気にオカルト側へ転びます。

東京タワーは“生と死”の象徴なのか

東京タワーの話で、事実として確認しやすいのは「素材」です。東京タワーは鉄骨でできていますが、その鉄材の一部が、朝鮮戦争で損傷した米軍戦車のスクラップ由来だ、という説明があります。英語版の東京タワー解説でも「鋼材の3分の1が朝鮮戦争で損傷した米軍戦車のスクラップ」と書かれています。
さらに、日本の鉄鋼会社の沿革ページでも「戦車から回収された鉄スクラップをリサイクルして作った鋼材が大量に使われたと言われている」と触れられています。

ここから先は、象徴の読みになります。「戦争の残骸から作られた塔だから“死”を背負う」「赤く光る塔は“生”でもある」という解釈は、事実というより、都市の物語です。僕はこの解釈自体を否定しません。都市のランドマークは、みんな勝手に意味を背負わされていくからです。

ただし、「古墳の上に建っている」「縄文から黄泉の入口」みたいな話は、確認の難度が上がります。とはいえ、東京タワーの近くに大型古墳(芝丸山古墳)があるのは、史跡紹介で触れられています。
だから“古墳がある土地=死の気配”という語りは、完全なゼロから出てきた妄想とも言い切れない。ただ、そこから「だから塔が死の装置だ」と結論するには、論理の飛躍が大きい。ここを飛ばさずに扱うのが、都市伝説を安全に楽しむコツだと思います。

まとめ

月の「裏側を見せない」は、NASAが説明している潮汐ロックで十分に説明できます。
月の周期も「28日で一致」と言い切るより、27.3日と29.5日という二つの周期を押さえたほうが、むしろ月が面白くなります。
クレーターが消えないのは、大気がほぼなく侵食が弱いから。ここはちゃんと科学の話です。

東京タワーの“戦車スクラップ”は、複数の資料で言及があり、都市の象徴を語る材料としては強いです。
ただし象徴は象徴、事実は事実。混ぜないほうが、話は長持ちします。

僕は都市伝説を「信じる/信じない」より、「違和感を入口にして、確かめる癖をつける」道具として使いたいです。確かめた結果、ロマンが残るならそれでいいし、違うなら違うで、月も東京も“本物の面白さ”が残ります。

私見・所感(筆者の意見)

僕は「月はゴルゴ13」みたいな比喩が好きです。科学的に正しいかどうか以前に、同じ面を向け続ける不思議さを、誰でも一発でイメージできるからです。ただ、その比喩が気持ちよく決まるほど、「人工物」という結論まで飛びたくなるのも分かります。

でも、飛ばないほうが面白い。潮汐ロックという自然現象を知ったうえで月を見上げると、「自然だけでこんな奇妙な安定が起きるのか」と驚ける。これは陰謀より強いロマンです。

東京タワーも同じで、戦争のスクラップから生まれた塔だという事実(少なくともそう伝えられている背景)は、象徴の読みを生みます。
僕はその読みを否定しないけれど、事実の層と物語の層を分けておくと、都市伝説は“毒”じゃなく“道具”になると思っています。

参考にした文献

  • NASA「Tidal Locking」:月が同じ面を向ける理由(潮汐ロック)の根拠
  • NASA Space Place「Why does the Moon have craters?」:月は大気がほぼなく侵食が弱いのでクレーターが残る根拠
  • NASA Science「Why study craters?」:風や水がないので衝突史が保存されるという説明
  • NASA StarChild:月の公転周期(約27.3日)という基礎データ
  • NASA Science「Moon phases」:満ち欠けの基本(見え方の周期)
  • Mayo Clinic / Cleveland Clinic / NCBI:月経周期は個人差があり21〜35日など幅がある根拠
  • 東京製鐵の沿革:東京タワー鋼材と朝鮮戦争スクラップ由来の言及
  • 東京タワー鋼材「戦車スクラップ」言及(概説):鋼材の一部が米軍戦車スクラップという整理
  • 当時の発言記録の二次資料(視聴メモ):2006年頃に「月はゴルゴ13」等が語られたとする記述

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